ソーラーバルーン
- 農業用マルチシートから作りました -
ソーラーバルーンを クラブのみんなで上げました。
本当は、子供たちに作ってもらいたかったのですが、時間がないため 管理人が作ってしまいました。
すいません。・・・・ m ( _ _ ) m 「子供達に作らせないで、管理人が作って、どうすんだ。」と、お叱りを受けそうですが。・・・ (^_^;)
ネットなどの情報をみますと、ゴミ袋から作製しても良いようですが、袋を切り開いたり、
接着する必要があるので、ゴミ袋ではなく、ホームセンターで販売されている、農業用の黒い
ポリエチレン製のマルチシートを購入しました。 ( 畑の土にかけるシートです。)
幅が広い方が接着の回数が減るので、なるべく幅の広い物にしました。
ケーヨーD2柏松ヶ崎店で、幅135cm、長さ50m、厚さ0.02mmの物を購入しました。
( ロイヤルホームセンター柏店よりも 幅が広いものを扱っていました。)
そして、設計です。 どのような形にしようかと考えました。ネットの情報をみると、
牛乳のテトラパック(正四面体)のように作ると、直線の接着だけで、簡単に大きなものが作れるようです。
また、大きければ大きいほど、気球内部と外部とのわずかな温度差で上昇するようです。 このため、
なるべく大きなものを作りたいと思いました。
他に、ネットで調べてみると、富士コスモサイエンスの「おひさま熱気球」という製品がありました。
長いチューブ状の袋で、つぶれた状態で、90cm×300cmあるそうです。 膨らました状態を
円柱と仮定して体積を求めてみます。 90cm×2=180cmで、丸く広げると周径180cmなので、
直径は 180cm÷3.14=57.3cmあるようです。 そうすると、半径は、57.3cm÷2=28.7cm
です。円柱の体積の公式は、(半径)×(半径)×3.14×(高さ)なので、体積を求めると、
28.7×28.7×3.14×300=775915.98 立法cm = 約 0.776㎥ です。
この製品は、1〜2分日光に当てるだけで、浮くそうです。体積としてはそれほど大きくないですが、
細長いので効率的に暖まるのかもしれません。 これを参考に、円柱状のものを作製しようとも
思いました。しかし、今後、プラネタリウムのエアドームを作ってみたいとも思っており、その練習
も兼ねて半球形を作り出す練習もしてみたかったので、熱気球の形としてみました。
形は決まったので、次は、大きさをどうするかです。ネットで調べると、 球形ですと、直径4m程度あれば、
内部と外部の気温差が8℃程度で上昇するそうです。直径4mというと、かなりの大きさです。
体積は、33.5㎥もあります。こんなに大きいのは無理なので、(空気を入れるのに、クラブ前の準備時間だけで
膨らませる作業が終わるか不安でした。) とりあえず、直径約2.5mの半球の下に、逆さにした円錐が下に
つくような形の熱気球型としました。高さは、約4mとなります。 この大きさにした理由は、135cmの幅の
マルチシート6枚で、(のりしろ分両側2.5cm×2=5cmを引いて130cm) 最大周径130cm×6=780cm
=7.8m となり、7.8m÷3.14= 2.48m なので、直径約2.5mとなりました。 また、下図、右の
ような形を組み合わせて作りますが、1枚が5mとなるため、6枚使うと、計30m使うことになります。
購入したマルチシートは、50mなので、もう少し大きなも物も作れますが、先述のとおり、空気を入れるのに
時間がかかるため、この大きさとしました。
(この辺は、まだ習っていない方、興味の無い方は、読み飛ばして下さいね。)
下部は、円錐(正確には正6角形)なので、直線的に切り出せば良いですが、上部の半球部分の寸法は、
地球儀に貼ってあるシールのような形にしないといけません。 これは、三角関数コサイン( COS) の出番です。
( 何かの製作で、コサインを使ったのは、学生の時にプラネタリウムのドームを作って以来です。ほとんど忘れかけていました。 ・・・・ (^_^;) )
以下の表のように、半球部の一番下を0m、一番上を2mとして、下からの高さと、幅の半分の長さの関係は、
( 幅の半分の長さ ) = ( 幅1.3m )× COS( π÷2×(下からの高さ(m))÷2(m)) ÷2
となります。
( 基準線を中央に引いて、そこから左右に測って幅を切りだしたので、幅の半分としています。 cosの単位は、ラジアンです。 )
上記の式から 矢印の幅が、以下の表のようになります。
( 一番下の部分(0m)が、幅130cmなので、 半分の0.65mとなっています。)
下からの高さ(m) | 矢印の幅(m) |
0 | 0.65 |
0.1 | 0.648 |
0.2 | 0.642 |
0.3 | 0.632 |
0.4 | 0.618 |
0.5 | 0.601 |
0.6 | 0.579 |
0.7 | 0.554 |
0.8 | 0.526 |
0.9 | 0.494 |
1 | 0.46 |
1.1 | 0.422 |
1.2 | 0.382 |
1.3 | 0.34 |
1.4 | 0.295 |
1.5 | 0.249 |
1.6 | 0.201 |
1.7 | 0.152 |
1.8 | 0.102 |
1.9 | 0.051 |
2 | 0 |
さっそく、この表に基づいてマルチシートを切りだしました。
( シートの右下端にあるのが、1mの竹製の物差しです。)
管理人の家は広くないので、長さ5mも入るスペースはありません。 リビング兼応接間のソファーと
テーブルをどかして、場所を作りましたが、3mがやっとでした。 このため、上部の半球部と下の円錐部は
折りたたみつつ、分けて切りだすこととしました。
ますは、長さを測りつつ、切り抜く型紙を描きます。
( 1mの物差しを使って、中心の位置を決めました。)
先に、簡単な下部の円錐部から作図しました。
( マーカーペンで描きました。)
円錐部を畳んで・・・、 次に、上部の半球部を描きました。 (上側からみています。)
(写真がちょっとピンぼけです。)
しかし、確認すると、下部の円錐部が、ずれてました。・・・・ (5cm ずれていました。
言い訳すると、 竹の物差しは、数字が印刷していないので、目盛りを数えなくてはいけません。 数え間違えていました。・・・)
( 大勢には影響ないような気もしますが、・・・)
マルチシートを、折り返しつつ、6枚重ねます。 そして、切り抜きます。 しかし、 ビニールが
すべってずれてしまい、正確には切れません。 端もギザギザです。・・・
そして、なんとか切り出しました。
これらを、接着するのですが、テープで貼るとコストもかかり、重量も重くなるので、秘密兵器の
シーラー(インパクトシーラー:熱を加えて圧着する機械)を使って接着していくこととしました。
( プラネタリウムのエアドームを作るため、密かに購入していました。)
これで、熱を加えて、圧着していきます。
圧着する部分を重ねて挟み、、圧着します。
圧着する長さは・・・、 切り抜いた線の長さは、1枚の片側が、約5.2mで、これが6本あるので、
5.2m × 6 = 31.2m ありました。
完成は 夜になってしまいました。
布団乾燥機で、送風して膨らましてみました。
夜なので、分かりにくいですが、結構巨大です。
風が強く、風の影響を受けています。
大分、立ちあがってきました。
風に吹かれて、飛んで行きそうになったのですが、持つところがありません。 掴もうとしても、
膨らんだ状態では、全くつかむことができませんでした。さらに強い風が吹いてきて飛ばされたため、
慌てて抱きかかえて抑えたのですが、横にある植物の枯れ枝や、後方にあるアンテナで、穴が
あいてしまいました。 ( 飛ばされそうになたので、抑えるのに夢中で、写真は撮れませんでした。)
とりあえず、わかる範囲は、テープで修復しました。 夜で暗くて見えなかったのと、
風が強かったので、作業が困難であったので、他にも穴があいていたようですが、
後日明るい所で、確認することとしました。・・・・
先ほどの予備実験で、このバルーンに完全に空気が入るのに、この布団乾燥機で
約15分かかりました。 クラブ前の準備の時間を考えると、このぐらいの時間が限度です。
のちほど、このバルーンの体積が出てきますが、このバルーンは体積が、8.41㎥あります。
この布団乾燥機の送風量は、 8.41㎥ ÷ 15分 = 約 0.56㎥/分 でした。
( 今後のバルーンの送風の際に 参考にします。)
ここで、ちょっとお話が変わります。
どの程度の内外の気温差で上がるか知りたかったので、計算をしてみました。
いろいろな方の、ホームページを見てみますと、アルキメデスの原理と、ボイルシャルルの法則を
使って計算できるそうです。 これを使って求めてみます。
( ソーラーバルーンの重さ )
農業用のマルチシートは、厚さ 0.02mmで、 18.4g/u だそうです。
今回のソーラーバルーンの表面積は、
(1/2半球部、4×π×半径×半径÷2) 4×3.14×1.24×1.24÷2
(円錐の側面積、半径×母線×π) 1.24×3×π
あわせて、 21.383 u となり、 全体の重さは、 18.4g/u×21.383u = 393.45g です。
( ソーラーバルーンの体積 )
(1/2半球部、 4÷3×半径×半径×半径÷2) 4÷3×1.24×1.24×1.24÷2
(円錐部、 半径×半径×π×高さ÷3) 1.24×1.24×π×2.73÷3
あわせて、 8.41㎥ です。
空気の密度は、10℃で 1.241 kg/㎥ なので、 ソーラーバルーンの重さ 393.45g
(0.39345kg)分の浮力を受けるには、0.39345÷1.24= 0.315 ㎥ ( 0.32 ㎥) の
空気が膨張して浮力を受ければ良いです。 元の体積、8.41㎥ が、0.32㎥ 膨張して、
8.41+ 0.32 = 8.73 ㎥になればよいそうです。
( 冬の日の当たる所を 10℃として考えました。)
外気温10℃ は、273+10=283 (K)
ボイル・シャルルの法則から、
( PV/T=P’V'/T'という公式です。 P:圧力、V:体積、T:絶対温度 、 圧力と体積は反比例するが、絶対温度には比例するという法則です。)
大気圧 1気圧で、 温度上昇分をTとすると
1×8.41÷283=1×8.73÷(283+T)
よって、 T=10.768
約 10.8℃の内部の温度上昇があれば良いことになります。
( こんな計算するのは、大学受験の時以来かもしれません ・・・ (^_^;) )
しかし、10.8℃も、内部の温度が上昇するのか不安でした。・・・
その後、クラブの前日まで管理人は熱を出し、寝込んでしまったので、穴の確認、修復が
できませんでした。 クラブの日に、学校に持っていって確認すると、案の定、穴だらけでした。
お天気も雪の後で、安定しません。曇の切れ間から、少し太陽が顔を出す程度です。
早速、布団乾燥機で空気を送り込みました。 しかし、なかなか膨らみません。
あちこち穴だらけです。慌ててテープでふさぎました。
(ピンボケですが、穴が縦に並んでいます。)
先に出てきました通り、試験的に膨らませた際に、風が吹いて飛ばされそうになり、
抱きかかえて抑えました。 その時に、枯れ木やアンテナで、引っ掻いた穴が、まだたくさん残っておりました。
慌てて塞いだので、何か所あったか覚えていませんが、ごく小さい物まで入れると数十か所はありました。
途中、セロテープが切れてしまい、予備のテープまで持ち出しました。
(100均のビニールテープは、ほとんど接着せず、セロハンテープで接着しました。)
穴をふさいで膨らまし、(みどりの)広場に持って行きました。
広場に運んだ後も、穴が何か所も見つかり、修復しました。
椅子で係留しておきました。
日照はほとんどありませんが、少しは浮いています。
このときは、まだ内部にかなりの空気が入っています。
その後、室内での準備のため、この場所を離れました。 その後、日が照ってきて上昇したようです。
また、風で吹かれてアンカーの椅子ごと流されたり、低学年の子が触って上昇させた際に
穴を開けてしまったり、・・・いろいろあったようです。 ( 管理人は、室内の準備のため、この場所を
離れており、 詳細はわかりませんでした。 しかし、これを見ていた先生が、その後の状況を見にきた
管理人に教えてくれました。 )
再び広場に様子を見に戻ってくると、30cmぐらいの大きな穴が開いて、着地していました。
この時に、一人の子供が気づいたのですが、この穴から中を覗きこむと、穴から光が漏れてきて、
プラネタリウムのようにきれいでした。また、穴の位置が良く分かります。小さな穴はテープでとめて、
大きな穴は、ひもでしばって閉じました。 この時点で、かなり空気は抜けてしまっていました。
しかし、日が照ってくると、少し浮いてきました。
さらに日が照ってきてしばらくすると、どんどん上昇を始めました。
( 風にあおられたためもあると思いますが、) 紐にはかなりの力がかかっています。
3階建ての校舎よりも 高く上がりました。
この後、太陽が雲に隠れてしまい、下降しました。木に引っかかったりしましたが、
再び日が照ってきてしばらくすると、再上昇しています。 また、太陽が雲に隠れては下降し、
再々度日が照っては上昇しを、繰り返しています。何度も上昇下降を繰り返し、忙しい状態でしたが、
かえって子どもたちには、日射と上昇の関係が分かったので、このような天気の方が、
ソーラーバルーンの実験には適しているのかもしれません。
天候の影響で、結果的に室内の実験と順番が前後しました。 先に、クラブのみんなに広場に
集まってもらって、上げました。いろいろありましたが、何とか上がって良かったです。
( 反省点、感想 など)
1. 0.02mm厚のシートは、破れやすいと思った。 しかし、厚くすると重くなり、上がりにくくなる。
この辺のバランスをどこにとるか、難しいと思った。
同じ大きさのバルーンで、厚さを0.03mm(27.6g/u)とすると、15.8℃の内部の温度上昇が
必要であるが、この程度なら、可能であると思われた。 より厚くて丈夫な物も利用してみたい。
2. 最初に自宅で膨らませた際は、下部以外に紐は付けていなかった。このため、風に流されると、
全くコントロールが利かなかった。それにより、バルーンを破損している。
当日は、上部に1本の紐をつけ、係留をした。しかし、上部の1点では、風であちこちにたなびいて
しまい、全く安定しなかった。 上部に3本の紐をつけ、3方向て固定しないと安定しないと思われた。
今後、係留するする際は、もっと多くのバラストや上部3方向以上のロープでの固定としたい。
3. 製作の際、シーラーは、有効であると思われた。やはり、足踏み式の方が、両手が使えるので、
効率的に圧着できた。
4. 児童達は、自分たちで作りたいと言っていた。 やはり、児童に作らせるべきであると思われた。
5. 穴が完全に修復できず、穴の開いたまま上昇させている。かなり空気が漏れてしぼんできたが、
内部も1気圧なので、思ったより空気の漏れは無いようだった。 20〜30分は、多少の穴があっても
大丈夫なように感じた。
6. プローべ式の温度計を使って実際に内部の温度を測ったり、非接触式の温度計で表面の温度を測ったりして、
太陽の日射との関係を考察させたりしても良かったと思われた。
7. 同じ体積の形違いのバルーンを幾つか作り(球形、円柱形、正四面体 等 )、どれが上昇しやすいか
予想をたて、 実際の実験で比較し、なぜか考察させたりしても良いと思われた。(小学生では難しいか?)
また、色違いのバルーンを作って、上昇の様子を比較しても良かった。
8. 天気は晴れたり曇ったりの繰り返しであった。 上昇が安定しないので、当初はもっと晴れてくれれば良いと思った。
しかし、結果的にはその方が、日射 -> しばらくして暖まる -> 上昇 -> 太陽が雲に入る -> しばらくして冷える
-> 下降する -> また、日が照る -> しばらくして暖まる -> 上昇 -> また、太陽が雲に入る -> しばらくして冷える
->下降する ->・・・・の繰り返しで、日射と上昇の関係がよく体感出来たようだった。
千葉県 柏市立富勢西小学校 科学クラブ 日記