ピンホール プラネタリウム 製作記 

 月投映機 ・ 惑星投映機 ・ ポインター   

 ( 方位投映装置 ・ 輝星投映装置 )

       (星座絵投影機、星座絵投映装置、星座絵投影装置)            

 ホーム > 機器・材料一覧 > プラネタリウム > 製作記 > 月・惑星投影装置

  

   ー 月、惑星投映機、ポインター・方位投映機は同じ型式にしました。−

 

  月投影装置、 惑星投影装置、 ポインター(指示器)、方位投影装置 は、凸レンズで実像を

 映す機械です。このため、原板の絵が違うだけで、同じ構造としました。

 ( 月・惑星投影装置は、ピンホール式でも製作可能です。五藤光学やケンコーのピンホールプラネタリウムも、

  月や惑星の投映装置は、ピンホール式となっています。今回は、投映像を明るくするため、レンズ式の装置としました。)

  

 

 レンズの公式   (ここの原理の説明は、星座絵投影装置のページのコピーです。)

  惑星投映装置等は、基本的には凸レンズで実像を映す機械です。原理的には、

 下図のような凸レンズの原理そのものです。(Bが原板の絵で、Bの右方に光源が

 あり、原板の像が、Aに実像となって映ります。)

 (こちら側に光源)

   レンズの公式は、1/f=1/a+1/b という式で表されます。(Wikiのページは、こちら) 

 倍率というか拡大率は、(この場合は、Bが原板で、Aがスクリーンなので)

 a/bとなります。  (倍率 m = a/b となります。)

 1/f = 1/a + 1/b      の右辺を通分すると

 1/f  =  ( a + b ) / ab  となります。 さらに、両辺の分子、分母をひっくり返すと、

 f =  ab / ( a + b )     右辺の分子、分母を ともに b で割ると、

 f = a / ( a/b + 1)       m = a / b なので、

 f = a / ( m + 1 )     となります。 これを、倍率 m = の式に変形します。

 m + 1 = a / f       

   m =  ( a / f  ) - 1                となります。

 レンズからスクリーンまでの距離が a です。 とみにしモバイルプラネタリウムのドームの

 半径は、2.5m 、ミリに直して2500 mmが、a の値となります。

  今回、入手したレンズの焦点距離は、約100oでした。上記の式に当てはめて倍率を計算

 すると、m = ( 2500 / 100 ) -1 = 24 となり、24倍となります。

 

  部品は、下の写真の様に、塩ビの水道管の部品を中心に流用しました。少し大きいホーム

 センターで揃う部品ばかりです。

  

  原板の所を矢印や月のパターンなどと交換すれば、月投影装置、惑星投影装置、ポインターの

 矢印投影装置、方位投影装置、輝星投影装置などに流用できます。原板の位置は、レンズの焦点

 距離付近になるように、短く切ったパイプの長さを調整します。さらに、ソケット部はネジがあるので、

 このネジでピントを調整できます。そのままでは、ネジがぐらつくので、テフロンテープをネジ部に

 巻いてからねじ込むと良いです。(普通の水道工事の時と同じです。)

  組み立ては、写真の通りに順番に組み立てます。管理人が入手したレンズは、直径が26oで、

 焦点距離が約100oのものでした。26oのレンスが、VP20の塩ビパイプの外径と一致したため、

 写真左上のソケットに入りました。(レンズは、秋月電子の店頭に現品限りで置いてあったレンズを購入しましたが、

 現在は置いてないようです。管理人は、月、惑星×5、方位×4、輝星×21、予備数個、約35個を購入しました。) 直径が

 異なるレンズの場合は、他のサイズの塩ビのソケットを利用したり、異径継手などを利用すれば良いと思います。

 

 (ソケット部に白く見えるのが、テフロンテープです。)

  下部の吊バンドのリングを、恒星球の根部に固定しました。

 金具の拡大図です。

 

  このように、組み立てました。

 

  星座絵投影装置では、原板の光源側にコンデンサーレンズを置きましたが、月や惑星

 投影装置の原板は小さく、中心部のみのため、コンデンサーレンズは使用しませんでした。

  LEDは、高輝度の白色、5o径を使用しています。LEDの明るさを調整するため、電流制限

 抵抗器以外にも、可変抵抗器直列に入れ、輝度の調整もできるようにしました。

 (LEDの点灯方法は、星座絵投影装置のページに少し触れています。 5Vの電源で、順方向電圧が、

  3.6Vで20mAの電流を流す場合、5(V)-3.6(V)=1.4(V) を抵抗で分担するので、1.4(V)÷0.02(A)=70(Ω)  と

  なります。E24系列の抵抗だと、近いのは、68Ωか75Ωとなります。 輝度調節のため、さらに直列に

  可変抵抗を入れました。

 

 

 

原板について

  月、惑星、方位、輝星投影装置の基本構造は、上記の通り全く同じですが、投映機内に

 装填する原板が違うだけです。

 

1.月投影装置 

  月は、見かけの大きさは、約30分(0.5度)です。とみにしのプラネは、直径5000o(5m)です。

 ドームの大きさの円の円周は、5000 X 3.14 =   15700 (mm) です。 これは、円周なので、

 360度の長さです。30分(0.5度)のドーム上の大きさは、15700(mm)を 360/0.5 = 720 で

 割ればよいことになります。 計算すると、15700 / 720 = 21.805(mm)  となります。

  ですので、ドーム上で、21.8mmの月の大きさを投影すれば良いことになります。 今回の場合、

 倍率は24倍なので、原画の月の大きさは、 21.8 / 24 = 0.9 ( mm ) の大きさとなります。

 フィルム面上で、0.9oの大きさの月の像を用意すれば、見かけの視界と同じ大きさの月が

 投映できます。しかし、実際には、投影される星像も20o程度となるので、もう少し大きい方が

 良いと思います。ドーム面上で投影される月の大きさが、約5cm程度となるように、上記の

 2.5倍の大きさとしました。 フィルム面上で、0.9 X 2.5 = 2.25(mm)となるようにします。

 ( それでも、実際に投影してみると、かなり小さく感じました。実際の月は、小さく見えているんですね。)

 

  月の月齢による変化をどのように表したらよいか情報を集めましたが、ウェブ上で公開

 されている所はほとんどありませんでした。情報を探していた際に、つくば科学フェスティバル

 に行った際に、つくばエキスポセンターの出展で、五藤光学のNEXというピンホール式の

 プラネタリウムを見せて頂く機会がありました。この機械の月の投影装置は、元来ピン

 ホール式の満月(といっても、のっぺらぼうの満月、断面が円形の光束が投射されるだけ)が、

 光束の途中で、満ち欠け形になるように光束を覆い隠すようになっていました。

 (文章で表すのが困難です。すいません。)

  こちらのプラネタリウム展示館には、五藤やケンコーのピンホール式のプラネタリウムの

 構造を詳細に教えてくださっています。月齢の調整装置は、こちらのページの上から2番目の

 写真のようになっています。月の満ち欠け表す遮蔽装置をみたところ、さすがによく考えて

 あると思いました。この構造を参考にしようかとも思いましたが、旋盤やフライス盤等が

 ないと加工が困難と思われました。また、表現される月の位相の弦ですが、機構の都合で

 月の両極からの弦とはなっておらず、また、月の模様が表現されないので、他の物も考えました。

  また、プラネタリウム展示館には、ケンコーのピンホール式プラネタリウムの様子も展示して

 くださっています。ケンコーのプラネも月の投映は基本的にはピンホールですが、恒星用の

 光源とは別の光源が用意されています。月齢の表示は、オレンジ色の円盤にそれぞれの

 月齢の形に合わせた穴が円周に沿って開いており、このオレンジ色の円盤を回転させて、

 月齢を調整するようになっています。(ターレット式となっています。) ピンホール式なので、

 (実際には月の形の光束が投映されるので)、月の模様は投影されません。

 

  これらの両方の特徴を兼ね備えた物を考えました。 満月の原板をレンズで投映はしますが、

 満月の原板を、月齢に応じて覆い隠せば良いと思いました。(肉眼で実際の月を見ても、欠け際の陰影は

 肉眼ではほとんど分かりませんので、違和感は無いと思われました。) 覆いはターレット式にすれば、

 コンパクトに納まりそうです。しかし、実際に部品を集めて眺めてみると、月齢が約30種類あるので、

 ターレットの円周上に配置すると、1つの月齢で1cmを割り当てると、円周が約30cmとなります。

 円周率で割ると、直径が9.5cmとなります。月の投影装置は、恒星球の根部に取り付けるので、

 約10cmの大きさとなっては、設置するスペースが無いのと、設置できても他の投影装置と

 干渉してしまうことが予想されました。

 

  その後も考えましたが、管理人の工作力、技術力では限界を感じたため、各月齢ごとの原板を

 用意し、その都度差し替えることとしました。(結局、原始的な方法となりました。) 原板は、

 星座絵の撮影法と同じに、各月齢のCGを撮影しました。CGは、ステラナビゲータを使用しました。

 いくつかの月齢のCGです。

    月齢 3

    月齢 7

    月齢 11

    月齢 15

  ステラナビゲータは、マッピングで月のCGを作成しているようです。欠け際の凸凹までは、

 表現されていないようでした。 これらのCGを、フィルム面上で、約2.25otなるように撮影

 しました。現像できたスライドを、円形に切り出した厚紙にマウントし、投影装置に装填しま

 した。ターレット式にすれば、月齢に合わせてその都度入れ替えをしなくてすみますが、

 今回の方法では、入れ替えが必要です。

 

 

 

 2.惑星投影装置

  惑星投映装置は、上の組み立ての写真の様に、(色セロファン)+(0.5oの穴の開いた

 アルミ板)の原板でできています。投映される像の大きさは、レンズの焦点距離100o、

 ドームの半径2.5m(2500o)の場合、上記の式に当てはめると、

  0.5 × ( 2500 / 100 - 1)  = 12 (mm)となります。

 恒星像よりも小さいですが、レンズ式のため星像が明るく、また色がついているので、

 目立ちます。色は、100均の「透明折り紙」として販売されているものを使用しました。

  これは、普通の色セロファンよりも色が薄く、今回のような用途にも適していると思い

  ます。透明折り紙の黄1枚では、金星に良いと思います。2枚では木星、3枚で土星に

 良いと思います。(土星だと、色セロファンの黄色でも良いかもしれません。)

 オレンジ(薄い赤?)は火星に良いと思います。色以外にも、LEDに繋いだ可変

 抵抗器で輝度を調整します。フルカラーのLEDを使っても良いのかもしれません。

  

  

 

 3.ポインター (矢印投映機)

  ポインターは、原板を矢印にした物です。これは、矢印を撮影したスライドではなく、

 厚紙を矢印の形に切り抜いて、色セロファンを貼っただけです。管理人は、緑としま

 した。(色はお好みにあわせてください。)

  ポインターは、レーザーポンターより投映式の方が手作り感があって良いと思います。

 (管理人の好みです。)矢印の形を、ツァイスのポインターの様に、先端の三角形だけでなく、

 矢印の軸の後端に矢羽を付けた形にしても味があって良いのではないでしょうか。

  ポインターも輝度の調節できたほうがよいですが、絞りをつけて調整をするより

 可変抵抗器をつけて、輝度の調整ができるようにしたほうが簡単と思います。

   

   星座絵投影装置のスライドホルダーの下に横たわっているのがポインターです。

  手持ちの星座絵投影装置と同時の使用となると、結構忙しいです。

  

 

 

 4.方位投映装置 (東西南北の方位を知らせる投映機)

  方位は上映開始時に口頭で方位をお知らせすればよいので、それほど必要の

 ない物かもしれません。とみにしモバイルプラネタリウムのドームは、エアドームの

 ため、壁面に方位の表示器を設置するのは困難です。(軽い物であれば可能ですが) 

 このため、プラネタリウム本体から壁面に向かって投影する方式としました。構造は、

 他の投映機と全く同じで、原板が東西南北となっているだけです。原板は、他の原板の

 作製同様、リバーサルフィルム(スライド用フィルム)を使って、下の写真の様に撮影

 しました。(実際の撮影は、部屋を暗くして撮影しています。)

   

  現像が終わったスライドを切って、円形の台紙に挟んで固定し、投映機内に

 装填しました。方位の紹介は、上映の最初に方位の紹介をする時だけなので、

 まだ、本体に実装していません。上映の最初に、手持ちで使用するだけでも

 良いのかもしれません。

 

 

 5.輝星投影装置

   レンズや塩ビパイプ等の材料は、1等星の数、21個分用意したのですが、

 まだ、製作していません。上記の型式ですと、管理人の製作したプラネタリウムの

 恒星球や恒星球の根部には、スペースの関係で実装できまん。もっと小型の

 投映機でないと実装できないため、今後の検討課題です。 

  惑星投影装置同様、「透明折り紙」などの薄いセロファンを使って色をつければ

 自然と思います。フルカラーのLEDを使えば、かなり厳密に色を追い込めそうですが、

 20個以上も調整するのは大変そうです。

 

 

 

 実際に使用してみました。

   

    (ピントは奥にあってしまいました。すいません。)

  恒星球の根部の日周軸に実装しました。北の恒星球の根部に、月、水星、

 金星の3つ、南の恒星球根部に火星、木星、土星の3つの投映機を実装しました。

 上映前に、StarWalkなどの天体シュミレーションソフトなどを参考に、プリセット

 しなければいけません(笑)。 向きの調整中に分かったのですが、投映機の

 向きによって、投映機同士が干渉してしまいました。その時は、日周軸の

 180度反対側に持って行き(東西を入れ替えて)、調整する必要がありました。

 (望遠鏡の赤道儀で、テレスコープイースト、ウェストの様な感じです。)

 

  夕焼けのリアリティに欠けるので、お見苦しいとおもいますが、投映された

 月と金星です。

       (うまく撮れていません。(^_^)

   投映された月は、実際の見かけの大きさより大きく投映されているのですが、

 それでも小さく感じました。児童達も、小さく感じていたようです。それでも、一応、

 月と認識してくれたので、良かったです。

 

  もっと、暗くなりました。

       

   写真には写っていませんが、恒星よりは明るいので、恒星との区別は容易です。

  でも、やはり月は小さく感じます。

 

   

  今回製作した月・惑星投映機は、他の投映機と干渉してしまうことがるので、

 改良の余地があるようです。昔のピンホールプラネタリウムの五藤光学のE-2

 ように月・惑星投映機を日周軸に、日周軸と平行に取り付け、鏡を使って調整

 できるようにしたほうが、干渉しなくて良いようです。 100均で売っている

 「のびーるミラー」(歯医者さんの鏡のように小さい鏡が、伸縮式アンテナの先に

 ついている物)を使えば、簡単に実現できそうです。今後、改良しようと思います。

 その場合は、反射されるので、月の原板は裏返しにセットしなければいけないと

 思います。

 

  

  

 

ホーム > 機器・材料一覧 > プラネタリウム > 製作記 > 月・惑星投影装置

 

                                       千葉県柏市立富勢西小学校  科学クラブ 日記

 

実験機器・材料のページに戻る

                                               

 

 

 

inserted by FC2 system